本研究の目的は、急激なグローバル化の進展の中で、一部の研究者が問題視するようになった「民主主義の劣化」という問題を、憲法学の立場から理論的かつ実証的に研究した上で、理論的かつ実践的な対応策を構想しようとする点にある。本研究では、比較憲法的な研究方法を駆使して、「民主主義の危機」に関する事実認識と規範的評価の是非を明らかにし、その上で、民主主義に関する原理論レベルの研究と、主要国の民主主義の実態に関する比較憲法的研究を通じて、現代民主主義の「危機」の原因を究明し、その上で、「民主主義の再創造」に向けた理論的かつ実践的な提言を行うことを課題とする。 そこで、平成23年度も、合宿研究会を年2回開催して、全国から連携研究者を集め、各国憲法の状況や理論動向に関する報告と検討を行った。昨年度までと同様、比較研究対象の各国の最新の憲法状況・憲法理論の把握に努める一方、近年の日本で問題視されつつある「自治体ポピュリズム」の問題について、実態に関する分析と比較憲法的検討を行って、現代日本における民主主義の再構築のための課題と方策について検討した。 研究代表者の本は以上の共同研究の企画・指揮する一方、その研究成果を踏まえて、個人研究としては、本研究の成果を踏まえて、民主主義の再構築のための基礎理論的な研究成果を著書として公刊した。本の著書は、本研究課題全体の基礎理論を提供するものであり、また、ドイツ憲法の専門家である本が、それ以外の国々の憲法政治の実態や憲法理論の状況に言及しつつ、議論を展開できているのは、本研究科題に基づき、3年間に渡って行われた共同研究の成果である。一方、研究分担者である愛敬は、個別課題として「リスク社会」における民主主義のあり方に関する考察を継続しており、9.11事件以降のアメリカ憲法理論の変容とその問題性に関する論稿及び福島原発事故に関わる論稿を公表した。
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