本研究は、「欧米憲法理論のアジアへの導入とその展開-日本・台湾憲法学の比較憲法的研究」をテーマとして、日本および台湾の戦後憲法学における欧米の憲法理論の導入・受容・発展の過程を比較研究することを目的としている。それによって、日本・台湾の憲法学の共通性と独自性を考察するとともに、日台憲法研究者の交流を促進することをも意図している。2009年度までは台湾と日本を交互に開催地として共同研究集会を行ってきており、2010年度においても、2011年2月に台湾において共同研究集会を開催する予定で準備を進めていたが、台湾側との調整がうまく調わず、台湾の研究者との研究集会は今年度は見送りとせざるを得なかった。そこで、「欧米憲法理論のアジアへの導入と展開」という課題をより広い視野から捉えるために、中国から9名の公法学者(山東大学、東南大学、中国社会科学院、華東政法大学、上海政法学院、中国青年政治学院)を迎えて「日中立憲主義の展開と公法学」というタイトルの下に共同シンポジウムを2010年12月に早稲田大学において開催した。立憲主義、地方自治、情報公開・個人情報保護、行政の統制のあり方などのトピックをめぐって日本と中国双方から報告者を立てて討議を行なった。これは、従来、山東大学と日本の間で行われていた「日中公法学シンポジウム」ともリンクするものであり、日本側からは早稲田大学のほか、九州大学、熊本県立大学、慶應義塾大学、中央大学、日本大学の憲法、行政法学者が参加した。アジアにおける欧米の憲法理論の継受の中国的なあり様を理解し、また日中公法学の交流の機会として共同シンポジウムは有意義なものであった。
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