本研究は、台湾の憲法研究者との研究交流を推進するとともに、台湾と日本における欧米憲法理論の導入・受容・発展の過程を比較法的に検討し、その独自性と共通性を明らかにしてアジアにおける立憲主義の可能性について考察を行おうとするものである。今年度は、早稲田大学において2013年3月30日に第7回日台憲法共同研究「日台憲法問題の現況と展望」を開催した。このために台湾側から7名の研究者が来日した。 研究会において、台湾側からは、台湾における形式的平等・実質的平等の観念(李建良・中央研究院)、女性に対するアファーマティブ・アクション(クオータ制)の発展(黄昭元・国立台湾大学)、人身の自由の保障に関する新たな動き(蔡宗珍・国立台湾大学)の報告がなされ、日本側からは、日本における平和主義の現況と課題(水島朝穂・早稲田大学)、自粛と日本型共同体主義(松平徳仁・帝京大学)、成年被後見人の選挙権(戸波江二・早稲田大学) に関する報告がなされた。これらの報告に基づき、それぞれ討論がなされ、日台両国が現在直面している憲法問題のありよう、および憲法理論の道具立ての違いなどが明らかになり、双方にとって有意義な研究会であった。今後さらに比較の観点から台湾と日本の憲法状況、憲法理論の検討を深めていく必要性が再認識されるとともに、台湾側参加者からは「アジア立憲主義」という観念の重要性が改めて主張された。 領土問題等をめぐり、日本と台湾、中国、韓国の間に緊張関係が高まっている時期に研究者レベルで交流を行った意義は大きいと考える。 報告者以外の参加メンバー:許宗力、葉俊栄、張文貞、林昕旋(以上、国立台湾大学)、園部逸夫(元最高裁判事)、岡田信弘(北海道大学)、石村修(専修大学)、江島晶子(明治大学)、毛利透(京都大学)、石川健治(東京大学)、松井直之(立教大学)、楜澤能生(早稲田大学比較法研究所所長) 等。
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