研究課題/領域番号 |
21330018
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
山本 輝之 成城大学, 法学部, 教授 (00182634)
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研究分担者 |
中谷 陽二 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (30164221)
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キーワード | 犯罪を行った精神障害者 / 刑事責任論 / 犯罪者処遇論 / 刑事責任能力 / 心神喪失者等医療観察法 / 人格障害者 / 性犯罪者 / 薬物中毒犯罪者 |
研究概要 |
1.前年度に引き続き、精神医療関係者と法学研究者からなる研究会を頻繁に開催した。これを通じて、医療観察法の運用を研究面からモニタリングし、その法的問題点の抽出・検討を行ってきた。 研究の最終年である今年度は、特に、医療観察法の運用上の法的問題点に関して出されたこれまでの重要な判例を中心に分析・検討を行った。その1つは、対象者が精神障害による妄想等に基づく錯誤によって強盗行為を行ったという場合、医療観察法の対象行為になお該当するかという問題である(最決平成20年6月18日刑集62巻6号1812頁)。もう1つは、鑑定入院命令が発付された後、事後的な事情の変更により鑑定入院の必要がなくなった場合、対象者等がその取消しを請求することができるかという問題(最決平成21年8月7日刑集63巻3号776頁)である。その他の裁判例を含め、このような検討を通じて、裁判所による、まさに「生きた医療観察法」を理解することができた。これらの成果を踏まえて、医療観察法の見直しに向けて具体的で実現可能な提言をまとめた。 また、本年度は、医療観察法における地域精神医療の問題も検討した。同法は司法地域精神医療の法的基盤を創設したものであるが、それは一般の地域精神医療に依拠している。ところが、一般の地域精神医療は、現在必ずしも十分な整備がなされているとはいえない。そこで、そこから生じる諸問題について、医療者からヒアリングし、問題を検討した。これは、医療観察法の処遇に関する連携の構築という問題であり、なお検討を要する課題である。そのため、これについては、新たな研究計画において、継続的に検討する予定である。 2.本年度は、最近、ホルモン治療、GPSによる監視などの科学的手法を取り入れて性犯罪対策に力を入れている韓国を訪問し、その法制度と実際の運用を調査した。これは、今後のわが国における性犯罪対策を検討するうえで、きわめて有意義なものであった。
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