本年度も引き続き、ヨーロッパ法における、著作権制限の一般規定に関する議論、および、著作権の侵害主体の議論を、アメリカ法の議論と比較しつつ調査・検討し、以下の3点について分析・考察をおこない、一定の成果を得た。 第1に、著作権の侵害主体についてはさまざまな行為類型があるが、私的複製規定が関係する類型について検討をおこなった。これについては、私的録音・録画補償金の問題も含めて考察をすすめ、4月の著作権法学会で報告する予定である。 第2に、特許権の間接侵害についてアメリカ法、日本法、ヨーロッパ法を調査し、その成果を、「間接侵害」『特許訴訟』(専門訴訟講座6)(民事法研究会)265-322頁(2012年4月)に公表した。特に、著作権法の侵害主体の問題(著作権の間接侵害)と比較しつつ検討を行った。その結果、同じネットワーク技術に関する著作権侵害行為についても、間接侵害行為と直接侵害行為の区別が困難となりつつあること、同じソフトウェアについても、特許法の間接侵害と同じ問題が生じうることを検証した。 第3に、準拠法についてである。その成果が、「職務著作制度およびその準拠法の新たな展開」高林龍・三村量一・竹中俊子編『知的財産法の理論的探求』(現代知的財産法講座1)231-249頁日本評論社である。これは、直接には、権利の帰属の準拠法について論じた論稿であるが、侵害行為の準拠法と区別すべきか同じとすべきかという議論において関連性を有しており、この部分についても検討を進めている。
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