研究概要 |
本研究は,平成18(2006)年の消費者契約法の改正によって導入され,2008年の消費者契約法,特定商取引法,景表法の改正によってさらに充実されることになった適格消費者団体の差止請求について,第1に,その法的性質(個々の消費者の権利の受託か,消費者団体の固有の権利か)を明確にすること,第2に,消費者個人と消費者団体との間の信認関係(信託関係)を解明すること,第3に,適格消費者団体の認定等に関して生じている問題点(個々の消費者の権利と消費者団体の権利の利害が相反する場合の解決の方向性)を分析し,差止めの類型(消費者契約,広告宣伝,不正競争,不公正な競争方法など)ごとに生じる差止請求関係業務等の問題点を,理論研究と実態調査を通じて解決すること,第4に,その成果を踏まえて,近い将来に予想される消費者契約法の改正案を提案することを目的とする。 本年度は,平成22年度までの研究成果を踏まえて,適格消費者団体の実態調査の統計分析と,それを踏まえた消費者団体訴権の問題点をまとめる作業を行った(圓山,角田)。 これらの分析結果を踏まえて,消費者差止請求権の基礎研究を補正するとともに(根本,福田),消費者団体訴権の比較法的分析を完成させて,13.研究発表(平成23年度の研究成果)で記載したように,その研究成果を雑誌論文および書籍で公表した(加賀山,深川,根本)。また,研究会における各メンバーの報告,および,講師として招聘する社会調査の専門家と議論を通じて,新たな知見(消費者団体による消費者差止請求訴訟と集団的賠償訴訟との密接な関係についての知見)を得るとともに,以上の調査・研究をまとめあげることができた。 これらの研究報告書は,明治学院大学法学部,明治学院大学法科大学院の紀要において,順次公表するとともに,準備中のホームページ(http://lawschool.jp/mcls/)において,その全体像を公表する予定である(現在は,パスワードで管理しているが,6月中には,一般への公開を予定している)。
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