研究課題/領域番号 |
21330026
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
岡田 悦典 南山大学, 法学部, 教授 (60301074)
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研究分担者 |
仲 真紀子 北海道大学, 文学研究科, 教授 (00172255)
藤田 政博 関西大学, 社会学部, 准教授 (60377140)
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キーワード | 裁判員制度 / 陪審制度 / 参審制度 / 刑事訴訟法 / 認知心理学 / 社会心理学 / 法と心理学 / 刑事裁判 |
研究概要 |
本年度は、2010年度から行っていた弁護士インタビューを継続的に行い、これまで実現できなかった事例と、性犯罪の事例(12月)と、少年事件により少年法により逆送され刑事裁判となった少年刑事事件(12月)、覚せい剤取締法違反事件(8月)を聴取したほか、裁判員裁判の尋問技術に関するインタビューをもう1件行い、合計4名について弁護士インタビューを行うことができた。この取り組みは、これまでに行ってきた尋問技術の研究の新たな側面についての情報を収集することができ、特に性犯罪、少年犯罪に特有の問題意識を得るといった意義深い内容であり、刑事尋問技術の実証的研究に大きな進展を与えた。また、これまでに弁護士インタビューの蓄積を、8月の段階でひとまずまとめ、特に重要と思われる論点について、ウェブ調査を行うこととした。そして、9月~12月に、調査票の設計、中身の練り上げなどの準備を行い、調査会社に委託して、2012年2月に意識・実験調査を行うことができた。この調査では、これまでの弁護士インタビューを踏まえ、尋問技術において悩ましい被害者の落ち度を主張するか否かによる判断の違いや、弁護人求刑の効果、具体的な尋問技術のあり方による意識の違いを調査するものであり、約1800の回答を得ることができた。また、2012年3月にプエルトリコで開催されたアメリカ心理と法学会に参加し、仲真紀子・岡田悦典・藤田政博の連名によるポスター報告も行った。さらに、同学会では本研究テーマに関わる陪審研究や尋問研究に関する報告に接することができ、有益な情報を得た。また、これらの研究と並行して、近時に公刊されている研究や学会報告について、1年間を通じて情報を収集し、今後の研究計画に役立てることをした。年度末の打ち合わせで、来年度はこれまでの調査をまとめ、アウトプットする方向で考えることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
もともと想定していた事例検討会による細かな技術については、これを取りやめ弁護士インタビューという形で行ったことから、当初意図していた情報は得られていないが、代わりに生の実践について集積することができ、あわせて、これと対応した形での意識・実験調査を行ったこと、すなわち、一般の意識調査、弁護士インタビュー、そしてウェブ意識・実験調査という3段階の調査ができ、学術・実務に資する分析材料を得つつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまで行ってきた調査を、最終年度に綿密に分析することを計画し、合わせて日本の学会にて、ワークショップを開催し、その成果の一端を公表して指摘を仰ぎ、ブラッシュアップしたいと考えている。また、弁護士インタビューについては、十分に情報を得ていない事例があるため(特に、重大な事件や、極端な否認事件など)、そのことを本研究計画の成果の分析を踏まえ、必要かどうかを探ることが課題として残されている。分析については、基本的なデータ収集に基づいているのみなので、その点の綿密な分析が必要であるが、尋問技術の文献調査から、現在の立ち位置を把握することも重要な課題として残されている。また、評議の分野のテーマが残されており、この点は、十分な調査データは得られていないが、意識調査などから得られる知見からどのような指摘が可能かを、合わせて検討したいと考えている。
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