研究課題/領域番号 |
21330033
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
今村 都南雄 中央大学, 法学部, 教授 (20055205)
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研究分担者 |
金井 利之 東京大学, 法学政治学研究科, 教授 (40214423)
佐藤 学 沖縄国際大学, 法学部, 教授 (80352475)
原田 晃樹 立教大学, コミュニティ福祉学部, 准教授 (20340416)
光本 伸江 福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (00511990)
嶋田 暁文 九州大学, 法学研究院, 准教授 (00380650)
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キーワード | 地方自治研究のバイアス / パラダイム転換 / 「自治」観の捉えなおし / 事例研究の復権 / 「住民自治」概念の矮小化 / 協働 / 「がんばる自治」論 / 「看護り責任の自治」論 |
研究概要 |
本研究の目的は、第1に、わが国における「自治」理解を問い直し、新たな「自治」観を提示することにある。第2に、従来の地方自治研究の「バイアス」を明らかにし、新たな地方自治研究の方向性を示すことにある。そして、第3に、「バイアス」によって十分目が向けられてこなかった「住民自治のダイナミクス」を正面から取り上げ、「意図せざる結果」に着目した複数の事例研究を行うことにある。 以上の研究目的を達成するため、本年度は、当初の研究実施計画に従って、研究体制の基盤構築と、理論研究会を基軸にした研究活動を行った。その成果は、大きく分けて、以下の3点である。 第1に、「住民自治」「協働」「地域主権」といった基礎概念をめぐる考察を行ったことである。それによって、「住民自治」概念の綾小化、「協働」概念の不明確な用法に基づく実態肯定化、「地域主権」概念による分権改革の歪曲化といった問題点を抽出した。 第2に、従前の地方自治研究、特に村松岐夫による相互依存モデルについての再検討を行ったことである。これによって、従前の地方自治研究が暗黙の前提としてきた諸条件を明確にするとともに、既存モデルの射程範囲を見極め、それらが射程外としてきた現象をとらえるための新たな理論モデルの構築を行った。縮小スパイラルによる長期的な過疎化の趨勢を描く「長期段階的撤退モデル」がその新たな理論モデルである。 第3に、「自治」観に対する再検討を行ったことである。「国に頼らず、自治体が己の知恵と工夫で地域を発展させる」あるいは「住民自らが主体的にまちづくりを実践し、自治を活性化する」ことこそが好ましいという「がんばる自治」論の考え方が従前支配的であった。これに対するアンチテーゼとして、本研究プロジェクトでは、「自治体行政がしっかりと最後まで責任をもって住民生活を守る」という「看取り責任の自治」論を導き出すことができた。
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