研究概要 |
ネオリベラルな統治形態のグローバルな拡大・浸透は、グローバル・ガヴァナンスそのものに、さまざまな新しい現象を引き起こしている。その動態を明らかにするべく、多角的な検討を行っているが、その一貫として平成22年度は研究会を四回行った。一回目は、7月23日、関西学院大学梅田キャンパスにおいて、カナダのヨーク大学のアナ・アガサンジェル准教授を報告者として迎え研究会を開催した。報告題目は"Bodies of Desire, Terror & the War in Eurasia"。報告では、ユーラシア大陸で展開している戦争と再建のプロジェクトの批判的検討を通じて、アイケンベリーやスローターなどに代表される国際的リベラリズムに内在している問題点などが鋭く指摘され、ネオリベラル・ガヴァナンスと戦争との関係についての議論を深めた。第二回目は、7月31日、東京の学士会館で、メンバーである東京外国語大学の中山智佳子教授の近著『経済戦争の理論』勁草書房の書評会の形式で行った。第三回目は、12月11日、神戸大学において、二名の知見提供者を招き、研究会を行った。名古屋私立大学の伊藤恭彦教授が「グローバルな正義と食の人権:『貧困の放置は罪なのか』とその後」という報告、また横浜市立大学の上村雄彦准教授は「『グローバル・タックスの可能性』とその後」という報告を、それぞれ行い、その報告をもとに、メンバーによる討論などにより議論を深めた。第四回目は、3月8日、アイスランドの金融危機を題材にしたドキュメンタリー・フィルム"Maybe I Shouid Have"の上映会を、グンナル・ジガーゾン監督をまじえて、神戸大学において行い、グローバル金融危機におけるアイスランドの役割、また、この問題における映画などの表象芸術の果たす役割などを議論した。研究会以外には、この科研関連の研究の途中成果として、土佐は海外の学会での以下の通りの報告を行った。 ("Crossing Bio-political Borders through Aesthetic Works : Challenging the Fortress against Asylum Seekers," (ISA Annual Convention, Montreal, 2011年3月16日-19日) ; "Bringing' the part of tbose who have no part' back in : The Democratic Spectral Poiitics of the Global Justice Movement,"(SGIR 7th Conference、Stockholm、2010年9月9日-11日))それに加えて、裏面のデータの通り、書籍の分担執筆分を含め、関連論文8本を公刊した。
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