平成21年度は、主として消費者選択の基礎理論に関する研究を実施し、以下のような成果を挙げた。 1.最終的な消費財の組への選好と選択の機会に関する選好のように、複数の意思決定基準を含む場合の選択の方式を2通り定式化した。すなわち、まず第1の基準で最適な選択肢の範囲を絞った後、その中で第2の基準で最適化を行うという方式と、2つの評価基準を優先順位を付けて結合した後に、その結合された基準で最適化を行うという方式を考え、両者の関係と相違点を明らかにした。また、それぞれの方式による選択が非空となるための条件、選択の整合性を満たすための条件、および複数の基準を適用する順番が結果に影響しないための条件を解明した。 2.選択の合理性を基礎付ける顕示選好理論に対しては、選択に内在する整合性の公理のみでは選択の合理性のエッセンスを捕捉することは不可能であるという趣旨の批判が提起されてきた。アマルティア・センによって提起されたこの批判を精査して、選択を拘束する外部的ノルムを内生化した顕示選好公理を定式化することによって、センの批判を克服する合理的選択の理論を構築した。 3.無限視野の配分問題に接近する新たなアプローチとして、無限視野の選択関数という新たな概念を定式化して、選択の時間的整合性を含むさまざまな公理を満足する無限視野の選択関数の正確な特徴付けを与えた。
|