研究課題/領域番号 |
21330044
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
蓼沼 宏一 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (50227112)
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研究分担者 |
鈴村 興太郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (00017550)
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キーワード | 消費者理論 / 選択機会 / 選好 / 意思決定 / 合理的選択 / 需要理論 / 厚生評価 / 厚生経済学 |
研究概要 |
平成23年度は、引き続き消費者選択と厚生評価の基礎に関する研究を実施した。 1.消費者が消費財への選好だけでなく、選択機会への選好も有するときの厚生評価の理論に関する研究を進めた。特に、経済学の基本定理の一つである「厚生経済学の基本定理」の拡張を行った。「厚生経済学の基本定理」は、市場メカニズムの均衡における資源配分と効率性の関係を明らかにしているが、従来の理論では、消費者の消費財への選好のみが考慮され、選択機会への選好・評価は考慮されていなかった。そこで、消費者は、消費財への選好だけでなく、選択機会への選好、および消費財と選択機会の組への選好という3つのタイプの選好をもつというモデルを新たに構築し、それぞれの選好の下での効率性-配分効率性、機会配分効率性、全体効率性-を定義した。さらに、消費財への選好と選択機会への選好に関して、アマルティア・センの定式化した条件を導入し、センの条件の下で、市場メカニズムの均衡における資源配分は配分効率性だけでなく、機会配分効率性および全体効率性を満たすこと(厚生経済学の第1基本定理の拡張)、また、3つのタイプの効率性のいずれかを満たす資源配分は、市場メカニズムの均衡として実現可能であること(厚生経済学の第2基本定理の拡張)を証明した。他方、センの条件が満たされないとき、厚生経済学の基本定理の拡張が不可能であるケースを示した。 2.現在から無限の将来までの世代の消費量の列を厚生評価する基準について、理論的に分析した。従来の理論において、厚生評価の通時的な安定性を要求する「定常性条件」の定式化が不完全であったことを指摘し、より適切な定式化を提示して、この条件と他の幾つかの基本的な条件を満たす厚生評価ルールを明らかにした。
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