研究課題/領域番号 |
21330045
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
柴田 章久 京都大学, 経済研究所, 教授 (00216003)
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研究分担者 |
浅野 貴央 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (40423157)
堀 敬一 立命館大学, 経済学部, 教授 (50273561)
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キーワード | ナイト的不確実性 / 金融市場の不完全性 / 所得分配 / 世代重複モデル |
研究概要 |
社会に不安定性をもたらす要因の一つである所得分配の不平等性に着目し、金融市場の不完全性を導入した世代重複モデルを構築し、金融市場の発展によって所得分配がどのように変化するのかを分析した。その結果、閉鎖経済では金融市場の発展は所得分配を平等化させるが、国際化の進んでいる経済では金融市場の発展が所得分配を不平等化させる可能性があることを明らかにした。 また、不確実性の存在が、企業の投資行動に与える影響を分析するため、リアル・オプションのフレームワークを用いて、将来の需要にナイト的不確実が存在する場合をモデル化し、独占企業の品質改善投資を分析した。その結果、不確実性の増大は、財価格の下落と財の品質の下落をもたらすことを明らかにした。 また、1990年代末以降、メインバンク・システムによって特徴づけられる日本の銀行と企業の関係に変化が生じてきたことに着目した研究もおこなった。例えば、メインバンクによる破たん処理に先立って、非メインバンクが融資を引き揚げる場合、融資を継続したいと考えるのであれば、引き揚げられた融資額を穴埋めする必要がある。この穴埋めによって、借り入れ総額に占めるメインバンクからの借り入れの割合が上昇することを「メイン寄せ」と呼ぶ。そこで、「メイン寄せ」の可能性を考慮した、銀行と融資先企業との関係を記述した理論モデルに基づいて、日本のデータを用いた実証分析を行い、リーマン・ショック以前、メインバンクは「メイン寄せ」に伴う追加的融資に関して非効率な企業のリストラを先送りしていた可能性が存在することを確認した。また、リーマン・ショック以後は、経済環境が悪化したために、メインバンクは非効率な企業からの融資を積極的に引き揚げるようになったことも示した。
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