研究課題/領域番号 |
21330045
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
柴田 章久 京都大学, 経済研究所, 教授 (00216003)
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研究分担者 |
掘 敬一 立命館大学, 経済学部, 教授 (50273561)
浅野 貴央 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (40423157)
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キーワード | 金融市場の不完全性 / 経済の不安定性 / ナイト的不確実性 / 公共投資 / リアル・オプション / 景気循環 |
研究概要 |
金融市場の不完全性が経済の不安定化要因であることは広く認識されているが、金融市場の不完全性の度合いの違いが不安定性に対してどのような影響を持つのかについてはこれまで分析されてこなかった。このため、金融市場の不完全性の度合いを明示的に導入したモデルを構築し、市場の不完全性の度合いが中程度であるときに、経済は不安定になることを明らかにした。また、金融市場の不完全性に基づく景気変動の性質を数学的に特徴づけるために、不連続点をもつ非線形モデルを区分連続な線形モデルに変換し、そこで現れる変動がカオス的性質をもつことを明らかにした。さらに、経済の不安定性に伴って生じる将来に関する不確実性の増大が、政最適公共投資に与える影響について分析を行った。ここでいう不確実性の増大とは将来の事象に関する確率分布についての曖昧さが増大することを意味しており、所与の分布の分散が増大するような現象(リスクの増大)とは異なる。その結果、不確実性の増大は、それが何に対する不確実性であるのかに依存して、換言すれば、公共投資から得られる収益に対する不確実性なのか、あるいは将来の公共投資水準に関する不確実性なのかに依存して、最適公共投資を減少させる場合も増加させる場合もあり得ることを示した。また22年度にはリアルオプション理論を企業の品質改善投資に応用して大きな成果を得たが、この流れに沿って、23年度は、経営者と投資家の間に情報の非対称性が存在し、契約コミットメントが不可能な状況を想定し、経営者の最適報酬と交代のタイミングに関する理論的な分析を行った。その結果、標準的なモラル・ハザードのモデルと異なり、退職金を支払うことにより、経営者の誘因両立性条件を満たしながら、報酬を引き下げることができる可能性があることを示した。すなわち、契約の強制可能性が低い場合には、退職金の存在が経営者を規律付ける可能性があるのである。
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