研究課題
時間割引率とそのアノマリーを実証的に計測し、実際の異時点間の選択行動への影響を明らかにするとの「研究の目的」から、本年度は「実施計画」にしたがって、以下の研成果をあげた。第1に、アンケートによるクロスセクションデータを用いて、時間選好率と時間割引バイアス(双曲割引、符号効果)が肥満ややせなどの体格と有意に説明することを実証的に明らかにした。とりわけ、双曲割引や符号効果と体格の関係を直接分析した実証研究は、文献上初めてのものであり、Social Science Research NetworkにアップしたDPは期間ダウンロード数でTop10に入った。この研究は、経済学以外の専門誌や一般向けの新聞・雑誌からも関心を寄せられ、広く公表された(『Q&Aでわかる肥満と糖尿病』9・10月号(2009)、Vol.8/No5、「特集医療経済と保険適応」;雑誌『プレジデント』200910.5号「締め切りを守れない人はなぜ肥満リスクが高いのか」など)。第2に、選好の確率的ゆらぎ(嗜好ショック)を導入し、その不確実性によって発生するリスクを消費者が回避するところから時間割引が誘発されるような理論モデルを構築し、その草稿をいくつかのセミナー報告し(東京大学、2009年5月;京都大学、同年7月)、関連分野の研究者との意見交換を行った。第3に、康明逸氏とともに時間割引と喫煙の関係をアンケートパネルによって実証的に明らかにし、その結果をIAESのプラハ大会で報告した、パネルデータを用いて喫煙と時間割引の関係を分析した初めての貢献として位置づけられる。最後に、時間割引と負債保有との関係をアンケートパネルデータによって分析し、ワークショップ「異時点間選択の経済学」で報告、意見交換を行った。補助金の一部を2010年度に繰り越し、危険回避度と時間割引率の相関、双曲割引など、関連問題に関するインターネットアンケート調査を行い、次年度の分析に必要なデータを収集した。
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