開発途上国における環境保全型技術の普及を促進・阻害する要因について定量的に分析するために、今年度はエチオピアにおける環境保全型農業技術に焦点を当てて、分析のベースとなる農家の家計調査を行った。調査はエチオピア中南部を対象として、2009年9月に予備調査を行った後、2009年12月から2010年1月にかけて300世帯を訪問し、1世帯あたり2時間程度の調査を行った。調査では、所得、資産、教育レベルといった基本的な世帯情報に加え、不耕起農法、転作、有機肥料などの環境保全型農業技術に関する知識と利用、その知識の伝達の経路、環境破壊に対する意識、農民の社会的ネットワークの現状などについても詳細に聞いており、標準的な農家世帯調査とは異なる独自性のあるものとなっている。 土壌の浸食の激しいエチオピアでは環境保全型農法の普及が急務であるが、実際には普及はあまり進んでいない。このデータを利用すれば、環境保全型農法の普及の阻害要因について詳細に分析することができ、またその結果を用いて適切な政策提言をすることができる。特に、これまでほとんど分析されてこなかった、地理的条件(農業研究センターや普及員へのアクセスなど)、環境破壊に対する意識、社会的ネットワーク(特に、民族や宗教などを基にしたネットワーク)などが技術普及に果たす役割についての分析が期待できる。なお、本年度は調査の準備及び実施、修得したデータの整理に時間を費やしたために、学会発表や論文執筆までには至らなかった。
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