Lインドネシアにおける省エネ技術普及に関する研究 インドネシアの製造業を対象とした企業レベルデータを用いて、企業別にエネルギー使用量1単位当たり付加価値生産額(エネルギー効率性)を計算し、この指標を用いて外資企業から地場企業に省エネ技術が伝播しているかについて分析を行った.まず第1に、外資企業は平均的には地場企業よりもエネルギー効率性が高く、先進国の外資企業が環境規制の比較的緩い途上国においてエネルギー効率の悪い環境汚染型の直接投資を行っているという仮説は棄却された。また、外資企業の比率が高い産業では地場企業のエネルギー効率性が高い傾向が見られたが、これは外資企業の省エネ技術が地場企業に伝播していることを示唆している。このことから、インドネシアは外資を導入することによって国全体のエネルギー効率を高めることができるという政策的インプリケーションが得られた。 2.エチオピアにおける環境保全型農業技術の普及に関する研究 エチオピア農村における約600の農家世帯に対する調査を基にしたデータによって、有機農業、不(少)耕起農法などの環境保全型(かつエネルギー消費量の少ない省エネ型)農業技術の普及を促進する要因、阻害する要因について分析した。手法としては、計量経済学的な定量分析に加え、社会実験によるインパクト評価分析をも利用した。その結果、農民が新しい農業技術を利用するようになるためには、公的な農業普及員とのネットワークだけでは不十分で、コミュニティにおける社会ネットワークを広く持つことが必要であることがわかった。また、携帯電話の普及がそのようなコミュニティのネットワークの拡大と深化に貢献することも見出された。これらの発見は、開発途上国における農業技術の普及体制に対して大きなインプリケーションを与えるものである。 3.モンゴル金鉱における低環境負荷技術の普及に関する研究 モンゴル金鉱における企業レベルデータおよび河川から採取した水質データによって、水質汚染の度合いの低い採掘・精錬技術の普及に関する分析を行った。その結果、低環境負荷技術を使用することが多いのは、日米などの先進国企業や規模の大きい企業であることが見出された。
|