研究課題/領域番号 |
21330053
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
井伊 雅子 一橋大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (50272787)
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研究分担者 |
伏見 清秀 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 教授 (50270913)
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キーワード | 医療計画 / 医療提供体制 / DPC調査データ |
研究概要 |
医療提供体制を担う医師がどのように養成され、どのようなプロセスで各専門領域や地域に供給されていくかの情報は、国家的な医療計画立案の根幹を成す。この問題を考えるには、横断的に医師の分布を観察するだけでなく、縦断的に個々の医師のキャリア形成と、専門医養成のプロセスを検討する必要がある。しかし現在厚生労働省から2年ごとに発表される医療従事者調査は、二次医療圏、医療機関、診療科毎に医師の分布を示すだけであり、縦断的な情報が圧倒的に不足している。そこで本研究は、個々の医師が研修を受けた医療機関、選択した診療科、研修後のキャリア(大学勤務・市中病院勤務・開業など)を縦断的に観察することにより、医師の養成と供給の機能を担う医療機関が、新制度の導入後にどのように変化したのか、そして現在このような役割を担う医療機関の特徴を検討した。具体的には、医師キャリアの縦断的なデータベースを利用して個々の医師のキャリアに関する情報(初期研修先の医療機関の属性、後期研修先の医療機関の属性、専門診療科など)を解析した。 また、日々の診療行為明細を含む詳細な電子データであるDPC調査データの特性を活かして、診療経過を分析して、診療プロセスの視点からの医療の評価手法の開発の可能性を検討した。本研究では、従来から広く臨床指標として用いられている(1)リハビリテーション治療の早期開始と(2)術後抗菌薬投与期間のガイドライン遵守率を用いて、DPCデータを用いたこれらの指標の計測可能性とその意義を検討した。DPC調査データの一部を用いて、該当患者の抽出、除外条件の設定、観察項目の検出(リハビリテーションの実施と術後抗菌薬投与の中止日)、試行的計測の実施、データの分布と妥当性の検証を行った。これらの分析手法の開発は、我が国の大規模電子診療データを用いた研究の発展につながるとともに、医療の科学的評価と医療の質の向上に結びつくことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
地域医療に関するデータベースを構築する際には、プライマリ・ケアに適した診療行為コード化システムが不可欠であるが、現行の国際疾病分類(ICD-10)では地域医療の現場では診断基準を満たさないことが多く、実用性に大きな問題点ある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度(平成24年度)では、福島県立医科大学(福島医大)地域・家庭医療学講座と共同で、被災地(福島県の相馬市、南相馬市、いわき市を中心)に起こっている医療ニーズを把握するためのデータベースの構築を行う。 今回の大震災では、地域の住民の健康状態を把握するためのデータベースが整備されていないことも大きな障害となった。県内に広がる地域を舞台に専門家庭医を養成する地域・家庭医療学講座と行政と協力して、データベースの構築を試みる。
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