日本では、各都道府県が医療圏を設定して病床の整備や医療計画を策定してきた。医療圏には、一次、二次、および三次がある。このうち二次医療圏は、特殊な医療を除く一般的な医療サービスを提供する医療圏で、通常は複数の市町村がひとつの医療圏として認定されている。政府は二次医療圏の診療機能の均てん化を目標としてきたが、人口あたり医師数には大きな地域格差がある。それでは医師数が多い医療圏と少ない医療圏とでは、医療資源(医師・ 病院・病床)や業務量(患者数、症例数)はどのように違うのか。本研究では平成8年から22 年までの15年間のデータを縦断的に解析して、医師が多い医療圏と少ない医療圏では医療資源や患者数がどのように異なるのか、そしてどのように推移したのかを検討した。 また、近年、電子レセプトデータ、DPC調査データ等の大規模な診療電子データの分析が可能になり、医療資源の効率的な利用と医療の質の評価への活用が期待されるようになっている。そこで、日々の診療行為明細を含む詳細な電子データであるDPC調査データの特性を活かして、診療経過を分析して、診療プロセスの視点からの医療の評価手法の開発の可能性を検討した。 近年、診療データを転送する共通フォーマットとしてSSMIXが制定され、多くの急性期医療機関の情報システムのデータを電子的に集約することが可能となりつつある。これは、DPCデータ、レセプトデータ等の診療報酬データに加えて検査値、患者状態等を含む詳細な臨床データを含めた大規模診療データベース構築の可能性を秘めていると考えられる。そこで、本研究では、SSMIXを用いた診療データの集約とデータベース構築の可能性およびその活用方法を検討した。これらの分析手法の開発は、我が国の大規模電子診療データを用いた研究の発展につながるとともに、医療の科学的評価と医療の質の向上に結びつくことが期待される。
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