研究課題/領域番号 |
21330057
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
三谷 直紀 神戸大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (70219666)
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研究分担者 |
小塩 隆士 一橋大学, 経済研究所, 教授 (50268132)
岡村 和明 高知大学, 人文学部, 准教授 (70325398)
勇上 和史 神戸大学, 大学院・経済学研究科, 准教授 (90457036)
佐野 晋平 神戸大学, 大学院・経済学研究科, 講師 (80452481)
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キーワード | 雇用システム / 所得分配 / 健康 / 幸福度 / 賃金格差 |
研究概要 |
本研究は、国際比較を通じて雇用システムが所得分配に与える影響を明らかにするとともに、格差が健康・幸福度等に与える影響についても分析し,政策的課題を摘出することを目的としている。とりわけ、企業の採用行動や人材形成システム、定年制度、賃金制度や集団的賃金決定システムが、(1)学歴等の個人属性間賃金格差や個人属性だけでは説明されない賃金格差に及ぼす影響、(2)若年者や女性等の就業・雇用形態の変化に及ぼす影響、ならびに(3)仕事満足度や健康・幸福度に及ぼす影響について、国際比較による手法を用いて分析する。また、(4)所得格差が人々の生活満足度や健康意識に及ぼす影響についても国際比較を行う。 平成21年度は、交付申請書の研究計画に基づき、つぎのような研究活動を行った。(1)OECD、フランス厚生労働省、パリ第一大学、EUROSTAT及びLuxembourg Income Study等を訪問し、OECD諸国の若年雇用、労働時間制度、最低賃金制度、所得分配等に関する雇用政策・制度やデータ等に関する情報を収集した。(2)厚生労働省『賃金構造基本統計調査』やJGSS等の個票データやフランスの賃金構造データ(DADS)や労働力調査等の個票を入手した。(3)研究会を組織し、賃金格差等に関する研究を行った。その結果、つぎのような研究成果があった。(1)日本の場合、15歳時点の貧困が成人後の貧困リスクを高めるとともに幸福度や健康に関する主観的な評価も低下すること、(2)日本の場合、幸福度と健康に対する主観的評価はいずれも所得格差と負の相関があること、(3)日本では、幸福度と地域別所得格差と間に負の相関があり、特に,学歴が低く,就業形態が非正規雇用・失業など不安定な者の場合により敏感に反応すること、(3)フランスの最近の最低賃金の上昇は、所得格差を縮小させる効果よりは、むしろ、若年雇用への負の影響が大きかったこと等の知見を得た。
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