研究課題/領域番号 |
21330064
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡崎 哲二 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (90183029)
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キーワード | 産業集積 / 空間経済学 / 経済史 / 帝国経済圏 |
研究概要 |
4名の研究協力者(有本寛、伊藤香織、中島賢太郎、町北朋洋)と共同で研究計画を推進した。その成果として、第一に、戦前日本における銀行間の地域ネットワークの役割に関する論文を学術誌(Industrial and Corporate Change)に刊行した。戦前日本の銀行の多くは他の銀行と役員兼任を通じたネットワーク関係を有しており、関係先のパフォーマンスが良好な場合、こうしたネットワークは銀行の存続確率にプラスのインパクトを与えることが明らかになった。 第二に産業集積地に立地するプラントの生産性が相対的に高いという現象の理由を実証的に特定した論文を作成し、それを一橋大学のDPとするとともに、学術誌に投稿した。産業集積地のプラントの相対的高生産性の源泉として、一般に知識のスピルオーバーと競争を通じた低生産性プラントの淘汰が考えられるが、戦前日本の製糸プラント集積に関するわれわれの分析では、後者が主要な源泉となっていたことが明らかになった。第三に関東大震災が東京の産業集積に与えた長期的なインパクトを分析した論文を完成し、東京大学のDPとするとともに、学術誌に投稿した。空間経済学の理論から、一時的ショックが集積に持続的影響を与える可能性があるという含意が導かれる、これまでの実証研究の多くはそれに否定的である。本研究は産業別にインパクトの持続性を検証し、多くの産業についてインパクトの解消を確認した一方、機械工業については持続的なインパクトを検出した。 このほか、研究協力者が、経済のグローバリゼーションが生産性に与える影響に関するサーベイ論文、および国際的な企業間関係がイノベーションに与える影響に関する論文を学術誌に刊行した。並行して、引き続き日本の帝国経済圏におけるプラント別の立地データの構築を進め、1933年の台湾、1933年と1939年の「満州」に関するデータを完成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに構築したデータに基づいて研究を進め、論文の作成、投稿ないし刊行が行われている一方、データ・ベースの構築も予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに構築したデータと本年度新たに作成したデータを統合して研究を推進する。1910年における朝鮮の植民地化のインパクトについて研究するため、来年度から朝鮮経済史の専門家を研究協力者に加える予定である。
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