研究課題
1910年の「日韓併合」にともなう朝鮮半島の日本の経済圏への統合について深く分析するため、戦前期の韓国経済に関する専門的知見を有する東京工業大学の李昌玟助教を本年度から研究協力者に加え、研究代表者を含めて6名の体制(他に、有本寛、伊藤香織、中島賢太郎、町北朋洋)で研究計画を推進した。本プロジェクトの4年目に当たり、着実に研究成果が挙がりつつある。第一に、韓国の日本経済圏への統合が、日本の経済活動の空間分布に与えた影響を分析した論文を作成し、これを一橋大学で開催された国際コンファレンスで発表した。朝鮮半島との間の国境線が取り除かれ、関税障壁が引き下げられた結果、日本における人口と貿易の空間分布が西の方向に移動したことが明らかになった。この分析は、本プロジェクトで作成された、戦前期の『港湾統計』と『国勢調査』の電子データに基づくものである。第二に、戦前日本における銀行間の地域ネットワークの役割に関する論文が学術誌(Industrial and Corporate Change)に掲載された。この論文では、戦前日本の銀行の多くは他の銀行と役員兼任を通じたネットワーク関係を有しており、関係先のパフォーマンスが良好な場合、こうしたネットワークは銀行の存続確率にプラスのインパクトを与えることが明らかになった。第三に、産業集積地に立地するプラントの生産性が相対的に高いという現象の理由を実証的に特定した論文を昨年度学術誌(Regional and Urban Economics)投稿したところ、改訂要求の回答を得たため、コメントに対応してその改訂作業に取り組み、ほぼ改訂を完了した。第四に関東大震災が東京の産業集積に与えた長期的なインパクトを分析した論文を昨年度学術誌に投稿したところ、改訂要求の回答を得たため、コメントに対応してその改訂作業に取り組み、ほぼ改訂を完了した。
2: おおむね順調に進展している
上記の研究実績概要に記したように着実にプロジェクトが進展しているが、学術誌への投稿からレフリー・レポートの送付まで、時間がかかるケースが多いこともあり、掲載決定に至らないサブ・プロジェクトが複数ある。ただし、評価の高い学術誌から改定要求を得て、改訂が進んでいる論文が複数あることから、今後の成果に期待している。
まず、すでに学術誌から改訂要求を得ている論文の掲載に全力を挙げる。これらについては何れも年度の前半までに改訂版を再投稿する予定である。これに加えて、進行中で投稿に至っていない、いくつかのサブ・プロジェクトについて、新規に参加した研究協力者の協力も得て論文を完成し、本年度内に学術誌に投稿する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件)
三菱史料館論集
巻: 14 ページ: 1-20
Industrial and Corporate Change
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経済研究
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