研究課題
本研究では、国際共同研究チームによる世帯・村落データにもとづいて、2000年代の中国における都市-農村格差を、(1)中国全体の所得分布における都市-農村格差の比重、(2)資産所有における都市-農村格差、(3)地域経済成長率格差の規定要因、(4)地域的公共財供給における農村内・都市-農村格差、(5)社会保障における都市-農村格差、(6)都市-農村の制度的障壁、労働市場における政治・社会関係資本の役割および幸福感などの視角から、多面的に分析した。研究の結果、(1)2000年代を通じて都市・農村ともに1人当たり実質所得水準の向上と所得格差の緩やかな拡大が進んだこと、(2)タイル指数などを用いて世帯所得格差を都市・農村内不平等,都市-農村間格差に分解すると、都市の住宅私有化などを反映して2000年代を通じて都市-農村間格差の比重が上昇していること、(3)農村における絶対的貧困は着実に減少したが、国際比較可能な貧困線(1人1日1.25ドル水準)を用いて推計すると2007年時点で農村人口の13-14%程度がなお貧困層であること、(4)2000年代初めから導入された社会保障制度、就業政策、所得再分配政策など一連の公共政策は、住宅私有化、国有企業優遇、労働移動規制など所得分布を悪化させる要因に一定の歯止めをかけたと考えられるが、農村における公共政策はなお脆弱であること、などが明らかとなった。最終年度である平成23年度においては、データ整備を継続すると共に、研究成果の公表に主眼を置いた。国際学会等で研究発表を4回行い、また印刷中のものを含め国際学術誌へ3本の査読付き論文を発表した。さらに研究成果を一般向けに伝えるために、4回の講演・セミナーを実施した。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)
Contemporary Economic Policy
巻: Vol.39(印刷中)
World Development
巻: Vol.40(印刷中)
Journal of Comparative Economics
巻: vol.39, No.4 ページ: 470-85
DOI:10.1016/j.jce.2011.01.002