研究課題
本研究は、ミクロ的接近法とマクロ的接近法の両方を用いて分析を行い、技術と社会経済の関係について明らかにすることを目指すものである。まず、ミクロ的分析としては、ある外資系金融機関の人事データをもとに、査定と昇進、賃金について分析し、昇格確率と査定、勤続の関係、ファスト・トラック(早い段階で昇進した人はその後の昇進も早い)の存在などを確認する研究を行った。データの入手が困難であるため、詳細な企業内人事データを用いた実証研究は例が少なく、今回の研究の意義は大きい。この成果については経済学研究会(於:帝塚山大学)で口頭報告が行われた。政策研究大学院大学において研究会を第7回ポリシー・モデリング・ワークショップ研究会と共同開催した。そこでは、労働市場における経済環境が、個人の意思決定にどのような影響を与えたかについて分析した研究について報告がなされ、本プロジェクトにおける焦点のひとつである人事制度と個人の意思決定との間の関係について、重要な示唆を与えるものであった。独占的な産業においては、競争がないために非効率な企業行動が許されがちになる。この傾向は、とくに公営企業に強い。そこで、Data Envelopment Analysis (DEA)の手法を用いて、公営バス事業者の生産性を検討し、その効率性を比較分析した。一方、マクロ的分析としては、日本国内を細分化した空間的応用一般均衡モデル(spatial computable general equilibrium model)を構築して、高速道路交通網等のインフラ・ネットワーク整備によって生産性が増大し、それによってどのような社会的・経済的な効果があるのかについて定量的に分析を行った。また、同様の空間モデルを用いて、中国における農業補助金の問題に関する分析も行った。
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