研究課題/領域番号 |
21330066
|
研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
畠中 薫里 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (10265556)
|
研究分担者 |
細江 宣裕 政策研究大学院大学, 政策研究科, 准教授 (60313483)
寶多 康弘 南山大学, 総合政策学部, 准教授 (60327137)
秋山 修一 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (60347177)
小池 淳司 神戸大学, 工学研究科, 教授 (60262747)
熊谷 礼子 帝塚山大学, 経済学部, 教授 (20309511)
|
キーワード | 経済政策 / 知的財産権 / プロパテント政策 |
研究概要 |
今年度の主要な成果は以下の通りである。昨年度まで行っていたグラント・バック条項に関する研究をさらに発展させ、より現実に近いモデルにより政策提言を行った。グラント・バック条項とは、ライセンス契約締結時に、改良技術の譲渡をライセンサーがライセンシーに義務付けるという条項であり、近年、多国籍企業が主要な技術、およびその改良技術を保有し独占的地位を確立していることが問題となっている。昨年度まで分析した、ライセンサー1社、ライセンシー1社のケースを拡張し、ライセンシーが多数いる場合も、改良技術の譲渡価格が十分高い場合、グラント・バック条項により、すべての企業の改良技術に対する投資は増大すること、基礎的技術への投資は、グラント・バック条項により常に増大することが分かった。さらに、これまで分析したグラント・バック条項は、ライセンシーが改良技術の権利をライセンサーに譲渡するというものであったが、ライセンサーの改良技術に関するロイヤリティを無料とするというタイプのグラント・バック条項(タイプ2)、ライセンサーのみならず全てのライセンシーのロイヤリティを無料とするタイプ(タイプ3)の分析を行い、タイプ3では、改良技術に関する投資が著しく阻害されることが分かった。 また、上記のような理論分析と実証分析を橋渡しするために、契約理論に関するもののうち、逆選択に関する問題について数値計算によって解く方法を論じた。そこでは、理論モデルでしばしば仮定されるような簡単化の仮定が、実際にはそれほど簡単には成立しないことを示した。さらに、そのような簡単化の仮定(十分条件)が成り立たない場合でも、理論分析が予想するような結果が、少なくない可能性で成立することをモンテカルロ実験を行うことで明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データを提供してくれていた企業が、倒産したため若干、サンプル数が少ないなか、プロパテント政策による特許件数、R&D投資への影響についての実証分析を進めている。また、数値計算による分析についても、初稿を完成させている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究の最終年度に向けて、これまで個別に行われてきた分析を、最終的に完成させるようにする。とくに、草稿として完成しているものについて、可能な限り早い段階で原著論文等の形で公開することを目指す。また、個別のテーマに関する分析結果を全体としてとりまとめることも行う。その中で、本プロジェクト終了後に、さらに発展させるべき方向性について探ることにする。
|