研究課題
長期的経済成長のエンジンである技術革新は、地球環境問題に代表される外部性の解決のためにも不可欠である。この技術がどのように開発され、利用され、社会にその利益を生み出すか、その一種の、ライフ・サイクル全般にわたっての分析を、ミクロ・マクロの両面から、総合的に検討することを目指した。この目的のために、産業組織分析チームと地域・マクロ経済分析チームの2つをつくり、両チームがミクロ的接近とマクロ的接近を行うことで研究を進展させた。前者においては、たとえば、技術水準に関する私的情報がある元での典型的な逆選択問題を考えて、その問題を数値計算によって解くことで最適契約の性質を検討した。そこでは、想定する技術水準タイプの数が少数(たとえば、たかだか10程度)であっても、理論分析でしばしば仮定される簡単化のための数学的仮定(十分条件)が成り立つ見込みがほとんどないことを数値例によって示した。他方、その仮定が成り立たない場合であっても、最適契約が、理論的に期待される性質をしばしば満足することが示された。後者においては、RAEM-Light応用一般均衡モデルを用いて日本国内の地域経済モデルを構築し、平時だけでなく災害が発生する場合も考慮して、ネットワークの投資効果を分析した。そこでは、道路のような地方公共財と考えられているようなものでも、よりマクロ的な影響も災害時には重要になることが明らかにされた。また、複数地域間に影響が及ぶ汚染があったときに、貿易の不利益が生じる可能性があること、さらに、汚染に対して最適な課税がなされていない限り、汚染を減らすような新技術の導入が経済的な不利益を招く可能性があることも明らかにされた。これらの総合的な分析によって、技術や投資の影響を単独地域のみについて分析するのでは不十分であり、ミクロ・マクロ両面からのさらなる分析が望まれることが確認された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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