研究課題/領域番号 |
21330068
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中川 雅之 日本大学, 経済学部, 教授 (70324853)
|
研究分担者 |
浅田 義久 日本大学, 経済学部, 教授 (70299874)
|
キーワード | 都市計画 / マンション建替え / フィールド実験 |
研究概要 |
本研究では、成長管理政策のパフォーマンスを検証することを目的の一つとしている。ここでは、都市開発境界などの規制的な政策手段を、インパクトフィーなどの価格メカニズムを活用した手段に変更することや、当事者同士の交渉をベースとしたコース的なメカニズムを用いる制度とすることが念頭に置かれている。さらに本研究では、経済学と制度設計実務のコミュニケーションの改善を、もう一つの大きなテーマとして掲げている。つまり、都市経済学は住宅土地市場のゆがみを取り去る特定の政策が、現状を改善することを示すことはできても、その結果としてどのような空間が実現するのかを示せなかったことを大きな問題意識として持つ。これを改善するため、具体的には、都市経済がもたらす政策インプリケーションをラボ実験あるいはフィールド実験によって再現することを、一貫して追及している。 このため、23年度においては初年度に実施した都市開発実験、昨年実施したマンション建替え実験の実証分析を進めた。その結果、アロンゾ・ミルズ・ミュースモデルが予想する世界を、大規模なインターネット実験環境で再現することができることが確認された。インパクトフィーなどの効果も理論と整合的に確認された。また、都市の拡張期においてはモデルが予想するような付値行動を消費者がとるものの、都市の縮小期においては付値の引き下げが起こりにくいというファクトファインディングを行った。この点については、平成23年度に行動経済学的な文脈で、不動産価値の低下局面での資産保有者の行動を検証する実験を実施している。 また、昨年実施したマンションの建替え実験により、区分所有権の解消決議などの制度を備えた場合の当事者同士の交渉への影響を実証的に確認している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
都市開発実験の実施とその実証分析により、理論が想定するような行動と結果を、大規模なインターネット実験環境でも再現できることが確認された。これは都市経済学がそのインフリケーションを専門家でない者に対して「目に見える」形で伝えにくいという懸念を払しょくできる大きな進展につながる。また、都市の拡張、縮小局面で家計行動に関する新たなファクトファインディングも得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成21~23年度にかけて行った実験で得られた知見から、新たな都市計画手法を構想し、それをインターネット実験環境で再現、効果の検証を行うこととしたい。具体的には、都市の縮小期における都市開発協会の後退を、時間軸を意識した線引き、あるいは将来のインフラ費用負担の増加をコミットした都市計画などによって、実現することを想定している。これまでの実験結果とこの成果を活かすことで総合的な都市計画制度に関する提案を行うこととする。
|