本研究の基礎となる超高頻度データを5年分購入し、このデータを効率的に利用するために最適と思われるハードウェア環境を整備した。さらに、この環境上で必要なデータに容易にアクセスするためのプログラムを作成し、超高頻度データベースを構築した。このデータベースから東京証券取引所第1部上場全銘柄に対し、1分・5分・10分間隔の個別株式収益率を計算し、Roll(1988)の手法に基づいて日次の企業固有リスクの推定を行った。これに加え、市場全体リスクを含んだ企業リスクと企業固有リスクの関係を分析するため、realized volatilityの推定も行った。記述統計的分析によると、企業固有リスクは(1)推定に利用する収益率の時間間隔が短くなるほど大きく推定される(2)時価総額が大きい企業ほど小さく推定される傾向にあることが示唆された。 企業固有リスクを利用した実証分析については、ストックオプション制度導入が経営者のリスクテイクに与える影響に関する分析、および、メディア・ヵバレッジが企業固有リスクに与える影響に関する分析を中心に、先行研究のサーベイを集中的に行った。また、実証分析に必要なデータの収集に着手した。具体的には(1)ストックオプションを導入した企業とのその時期(2)コーポレート・ガバナンス関連データ(3)東証1部上場企業に関する適時開示情報(4)主要新聞に掲載された企業情報数に関する資料収集及びデータベース化を開始した。 さらに、ストックオプションと企業固有リスクの関係に関する予備的分析として、日次データを利用した分析を行い、ストックオプション導入企業のリスクが高いという結果を得た。
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