研究概要 |
前年度に作成した超高頻度データベースを基礎として、企業金融分野における実証分析を行い、ワーキングペーパーを作成した。 ガバナンスが経営者によるリスクテイク行動に与える影響について、ストック・オプションを導入した企業と、そのマッチング企業について関連する財務情報を収集し、ストック・オプション導入のアナウンス日前後でリスクテイクに変化が生じるかを検証した。ここでリスクテイクの代理変数として採用した変数は各取引日の企業固有リスクとrealized volatilityである。実証分析の結果、アナウンス日後1,3,5取引日のrealized volatilityはアナウンス日以前1,3,5取引日のそれに比べ有意に増大していることが明らかになった。この結果は、マッチング企業のrealized volatilityを利用してコントロールを行っても変化がなかった。 この結果は、前年度に行った日次データを利用した予備的分析の結果と整合的であり、長期のみならず短期においてもストック・オプションが経営者のリクステイクの程度を増大させると投資家が認知することを示唆する。 情報開示制度や情報提供機関が株価形成に与える影響に関する実証分析については、マスメディア報道量の定量化と、適切なデータベース選択について検討を行った。 以上の実証分析と平行し、よりよい性質を持つ企業固有リスク推定方法の開発に従事するとともに、サンプル期間を最新データに拡大する作業を行った。
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