研究課題
社債市場における価格形成の動学分析のため、社債発行情報データセット構築に取り組んだ。主に使用したデータベースはThomson Oneである。入手したデータは主に2種類に分けられる。まずは、日本で発行された普通社債発行ごとの詳細データや目論見書ファイルである。そして、引受会社である証券会社の主幹事としての引受額や件数を四半期・半年・年間というように一定期間ごとに区切って収集した。発行社債情報についてのデータは、1992年1月1日から2009年12月31日までである。主幹事会社の引受額データについては1991年1月1日から2009年12月31日まで収集した。詳細な情報が掲載されている目論見書は可能なサンプル期間内で可能な限り収集した。主幹事会社の引受額データからは、マーケットシェアを用いて市場集中度を計算した。これによって、主幹事証券会社の引受市場がどのような競争状態にあったのか、時系列で分析可能である。その結果、分析期間内で証券会社の倒産・新規参入・合併によって大きな変化があることが分かった。金子(2009)で提示されたIPOの過小値付け現象についての新解釈(不正確性プレミアム仮説)を、数学的モデルの形で定式化した。そして、「情報の非対称性の有無に関係なく、投資家間の意見分散が大きい銘柄ほどIPOの初期収益率は高くなる」という帰結を導いた。投資家の意見分布を推定するための情報が利用可能な部分入札方式下のIPOデータを用いて検証を行ったところ、仮説の妥当性を強く支持する結果が得られた。同時に、JPOデータベースの国際連携を将来的に行うため、1997年~2009年までの1500社以上に及ぶIPOデータベースの構築を進め、9割近くが完成した。
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三田商学研究 53巻2号(未定(印刷中))
18th IMACS World Congress and MODSIM09 International Congress on Modelling and Simulation(Anderssen, R.S., R.D.Braddock and L.T.H.Newham(eds))
ページ: 1545-1551
三田商学研究 52巻2号
ページ: 81-97