研究課題
社債市場について:マッケンジー鷹岡担当本年度は前年度に構築したデータベースをもとに、社債発行企業と引受業者のマッチング問題のパネル分析を行った。社債を頻繁に発行する企業も多いのでデータベースを発行企業ごとに時系列に構築することによってパネル分析を可能にした。データベースは1992年-2009年の長期間のため、発行企業と引受業者の双方に合併や倒産がみられた。すべての引受業者のサンプル期間中の変遷を調べ、マッチングが各分析時点で可能なサンプルだけにするために精査した。研究成果としてMcKenzie-Takaoka(2011)が出版された。研究成果の意義は、日本の社債発行市場において引受業者選択をパネル分析した既存研究が無く、パネル分析において変量効果が有意であることより、パネル分析を行うことが適切であること、発行条件だけでなく、発行企業と引受業者の市場での評判が選択の問題において重要なことや社債発行企業のメインバンクとの関係が有意にマッチングに影響することが分かった。この結果は、海外での既存研究と異なり、日本社債市場では評判のみが有意な要因なのではなく、メインバンクとの関係も有意である。株式市場について:金子担当日本のIPOに関する特徴的観察事実を、2010年までの膨大なデータベースを用いて広範囲かつ多面的に整理・確認する作業に取り組んだ。これまでに明らかになった興味深い点として平均的にみると、入札方式よりブックビルディング(BB)方式の方が新規公開企業にとってのコストは高いのに、なぜ企業はBBばかりを選択するのかがこれまで大きな関心事であったが、詳しく調べてみると、企業の規模や年齢によってコストの大小関係は異なることが判明した。「若くて小さい」企業ほどBBのコストは相対的に高くなり、入札方式を選択した方が有利となるのである。この事実は、主幹事証券会社が交渉上の有利さを利用して「若くて小さい」新規公開企業にBBを選択させている可能性を示唆している。
2: おおむね順調に進展している
平成23年度中、鷹岡・マッケンジーが一週間に一回一日の打ち合わせを行ったおとによって社債分析が順調に進んで利宇。研究成果もでている。
平成23年末から平成24年末まで、マッケンジーが一年間留学することになり、Sciences Po【フランス】とBocconi大(イタリア)に滞在し、科研の分析に授業・行政負担なしで専念することができることによって研究スペードがかなり上がることになる。ただ、日本を離れることによって共同研究者との打ち合わせがやりにくくなることを防ぐために、メールやSKYPEで頻繁に連絡することになっている。パリでの打ち合わせも予定にしている。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
MODSIM2011, 19th International Congress on Modelling and Simulation. Modelling and Simulation Society of Australia and New Zealand(Chan, F., Marinova, D.and Anderssen, R.S.(eds))
ページ: 1471-1477
http://www.mssanz.org.au/modsim2011/D6/mckenzie.pdf