研究課題/領域番号 |
21330079
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
|
研究分担者 |
鷹岡 澄子 成蹊大学, 経済学部, 准教授 (10361677)
金子 隆 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (90118935)
|
研究期間 (年度) |
2009-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 価格形成 / 社債市場 / 株式市場 / 証券市場 / 動学分析 / 引受業者 |
研究概要 |
本研究の目的の1つは日本の社債市場において発行企業と引受業者の過去の行動が現時点の社債発行と価格にどのような影響を与えるかを明らかにすることである。 1992~2009年までのデータを用いて社債発行企業と引受業者がどのようにマッチングを繰り返していくのかを時系列で分析。問題をより包括的に分析するために社債発行手数料・スプレッド・発行金額の分析に発行企業・引受業者の評判変数や発行企業とメインバンク(MB)子会引受業者との関係をモデルに組み込み、発行市場ではどのような要因が企業や投資家の行動に影響を与えているのかを検証。発行条件だけでなく発行企業と引受業者の市場での評判がマッチング問題と発行諸条件の決定において重要である事と同時に、発行企業のMBとの関係が統計的に有意にマッチングに影響することが分かった。 この結果は、日本社債市場では評判とMBとの関係が発行市場において様々な側面で有意に影響を与えるという分析結果は東アジア経済学会、計量経済学会アジア大会等において報告、有益なコメントを得た。それと別にモデルを推計するに際して計量経済ソフトウェア(EViewsとMicrofit)についてソフトウェアレビュー2本を執筆し掲載された。 日本のIPOにおいて2つの謎「ブックビルディング(BB)方式下の過小値付けが入札方式下のそれと比べて異常に高い事」「両方式が選択可能であるにもかかわらずBB方式ばかり選択されている事」に対して1つの統一的解釈を与えることに成功した。 引受主幹事はその収益構造ゆえに発行企業の利益を犠牲にして投資家の利益を高めようとする利益相反誘因を潜在的に有しているが価格決定に裁量の余地のあるBB方式下では過小値付けという形でその誘因が発現しやすい。とりわけ入札方式を選択した方がコスト的に有利な「若くて小さい」企業は交渉力の弱さゆえに利益相反の対象となりやすいことが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
社債発行市場の分析より発行企業と引受業者の過去の行動が現時点の社債発行と価格に影響をあたえるかどうか、どのような影響を与えるかをかなり明らかにすることができ、その影響が時間とともに変化していることが分かる。IPO分析において入札方式の重要さを明らかしたことによって制度的な要因が重要だと分かる
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題が順調に進んでいるが、本年度はこのプロジェクトの最後の年であるので、残りの時間で研究成果をまとめるために、今年度も国際的に評価された学会で研究報告し、無視・軽視した点を指摘してもらい、研究成果をより高いレベルにする。研究計画を変更する必要はない。
|