本研究は、企業倒産予知モデルを非上場企業の格付けに援用し、誰でもが容易に非上場企業を評価することができる手法を開発した。最終年である平成24年度には、平成23年度までに構築した暫定モデルについて、当年度データを追加し格付けモデルの精度を上げること、および成果発表に注力した。また、構築モデルの有用性を検証するために、格付け機関から格付けを付されている企業(上場企業データ)にモデル外挿することで本研究において構築したデモルの頑健性を検証した。 また、新たな視点としてBSIやCIといった経済インデックスと企業財務との関係を分析し、経営者心理を格付けに盛り込む手法を検討した。長期データを用いて分析した結果では、経営者の景況感が財務傾向に影響を与え(財務傾向が景況感に影響を与えているのではない)、結果経済環境が冷え込んでいる時代では、経営の良好な企業程より保守的な経営を採ることが明らかとなった。さらには、国際会計基準をにらみ企業評価に影響をあたえる土地再評価差額金などの取扱いについても最終モデルへの組み込みを工夫した。これは企業の所有形態(取締役会)への創業家関与が企業財務へ少なからず影響を及ぼしていることが明らかとなったからである。特に資産総額を過大に表示する事ができる土地再評価差額金の適用(任意適用)については経営者の恣意性が介入していることから、最終指標では取り除く作業を行い最終モデルを構築した。これらの検討に依り、頑健で幅広い企業に応用が可能なモデルが構築された。
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