2008年の金融危機によって、デスバレーの長いバイオ医薬ベンチャーにとって研究開発の継続に影響の出る可能性が高い。その場合、金融危機によるVCの消極性と、再生・個別医療など研究進捗とのトレードオフ状況下で、バイオベンチャーのプロジェクト継続維持を可能にする方法の探究が重要となる。このため、今年度のテーマとして、リアルオプションにおける意思決定保留機能に注目した。フレームワークは、R.S.Pyndyck & A.K.Dixitによる不確実性下でのマーシャルの閾値基準への埋没コストによる修正及びHysteresisのアナロジーである。仮想的な医薬開発投資における決定保留オプションの有効性を、埋没コストに加えて適応拡大における期待に関するパラメータに関してシミュレーションによるテストをした。R&D自体が学習オプションであることから、プロジェクト有望性の評価が重要となる。 2009年11月にはR.S.Pyndyck & A.K.Dixitに、2010年3月にはL.Trigeorgisに直接会って情報交換した。また、米・中のバイオ産業の状況について北京・上海・SF・NYのJETRO職員と情報交換した。加えて、中国の医薬バイオセンター担当者、バイオベンチャー上海GenPharma、シリコンバレーVCの三井ベンチャーの代表者、カイロのSmart Villageの取締役などとも情報交換した。 研究成果は、IAMOT2090&2010、PICMET2009、中小企業学会、研究・技術計画学会などで報告した。 意義・重要性は、基礎研究成果の事業化の長期的プロジェクト継続に伴う、高ボラティリティの状況下での頑強性に向けた意思決定保留オプションの有効性・限界のモデルによるテストと、アカデミック・実務の両専門家とのモデル修正と研究方向見極めに向けた情報交換にある。
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