今年度は、当該プロジェクトの最終年度にあたり、単年度の計画と同時に、プロジェクト全体の完了との両側面を念頭に置いた。 戦略的提携とオプションゲームの関係については、バイオベンチャーがオーファンドラッグの場合を除いて単独では創薬・医薬開発を遂行するのが非現実的との背景的事実から、ベンチャーから製薬大企業へのライセンスのタイミングを決めるスイッチングオプションのパラメーター(技術的飛躍度・不確実性)に基づき各意思決定スタイルの有効な範囲と境界を示すライセンス決定指針のマッピングの定式化を行なった。また、米国で新たに出現してきたバーチャルバイオベンチャーについては、同じくオプションゲームのアイデアを基に不確実性と市場の競合構造とによって、IPO市場低迷に由来するバイオベンチャーのVCとの関係、ブロックバスター医薬の特許切れ・ジェネリック医薬との競合激化に由来する製薬大企業の外部の技術への依存関係を、従来の特許に基づく独占的構造から完全市場への移行期と捉え、大学・VC・製薬大企業の間の寡占競争構造における「囚人のジレンマ」からパレート最適解への脱出には社会的革新としての戦略的提携が有効であることを、不確実性と競合の両尺度から定量的に示した。その他に、戦略的提携でのライセンスにおけるライセンス料要素の最適な組み合わせをモンテカルロシミュレーション、リアルオプション、確率的最適化などの手法にて検討した。 国際会議での研究者間の情報交換の他に、インド・トルコ・ウィーン・テキサスでのベンチャー・エコシステムの実態調査を実施した。 主な成果としては、GLogift・日本ベンチャー学会誌への論文掲載、日本経営学会、研究・技術計画学会、Glogift(ウィーン)・IEEE-ITMC(ダラス)、SGBED(IIMB)、ICTM(IISc)での研究発表などがある。
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