2009年度は、まず本研究の理論的側面の強化を行い研究本の執筆に取りかかった。本研究は、理論的背景として制度理論(制度経済学・制度社会学)と経営戦略論を用い、戦略人事の新たなフレームワークに基づく研究であるため、理論面の強化・体系化が重要であるためだ。なお「収斂化と差異化、変化と安定の二軸から探る企業間の人事システムの比較」をテーマとする本研究において、理論的背景と二軸との関係は、制度理論=収斂化・安定軸の理論的背景、経営戦略論=差異化と変化の理論的背景である。このような幅広い理論的背景をもつ本研究のフレームワークは、研究代表者の須田が、これまでの欧米の戦略人事研究に基づいて、独自に開発したフレームワークであり、戦略人事論に新たな視点をもたらすものである。そのため、理論的背景を含め本研究の基盤となる戦略人事フレームワークの体系化と出版は必須のものである。書籍出版は2010年秋を予定している(すでに出版社の企画会議を通っている)。 理論編の書籍刊行準備と平行して、2009年度下期から企業調査を開始している。企業調査の目的は、理論的フレームワークで示した内容の検証である。本研究の企業調査は、企業の人事システムを(1)異なる産業セクター間での比較、(2)同一産業セクター内の企業間比較、の2つの軸で行うものである。研究代表者の須田は製薬企業、研究分担者の八代は金融機関とそれぞれ担当の産業セクターを選択し、調査を開始している。研究代表者の須田の調査状況については、製薬企業7社(内4社が日本の国内資本、3社が外国資本)の調査を行っており、調査企業は非常に協力的で当初の予想以上に情報を得るなど調査は順調に推移している。 企業調査については、研究代表者と分担者以外に、新たに調査協力機関(コンサルティングファーム)を得、3人のコンサルタントが食品産業の調査にあたっている。個別産業の調査と分析を2010年度中に終了し、2011年度には産業間の比較を行う予定にしている。以上のように企業調査についても順調に進行しており、理論面と実証面の両面で、研究を進めている。
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