研究課題
平成22年度に行った研究によって得られた新たな知見等の成果は以下の通りである。1.日本の地場産業・伝統産業の成功事例として以下の各社を成功事例として取り上げ、各社の製品がなぜ人々を惹き付け、他のブランドと何が異なるのか、経験価値創造、技術経営、イノベーションなどの観点から分析した。例えば、京友禅の千總(京都市)では、マーケットセグメントとターゲットを時に変えて企業価値の向上を図りつつも、常に経験価値の最大化を求めてきていることが明らかになった。千總の永続の秘密は、時代性を鑑みた常に最高のデザインを目指し続けることによって、日本的感性を活かした顧客目線での経験価値の最大化を追求してきたことに他ならない。千總の友禅が顧客に熱烈に支持されているのは、職人の技術力に支えられている「こだわりのものづくり」により生み出された友禅が顧客にとっての経験価値を創造しているからであることを明らかにした。他にも、松栄堂(京都市)の香、俵屋(京都市)の旅館・宿泊サービス、信三郎帆布(京都市)の帆布製鞄、末富(京都市)の京菓子、山田松(京都市)の香・香木についても分析した。2.ヨーロッパのラグジュアリーブランドの成功事例としてシャネルを取り上げ、化粧品事業戦略、時計事業戦略および顧客戦略を分析した。3.日仏のブランド企業に見るラグジュアリーブランドの構築条件を明らかにするため、ブランド構築条件の抽出に向けた事例分析と比較考察を行った。4.消費者経験概念を再構築し、消費者経験視点による差異化戦略を考察するとともに、特に身体性認知(Embodied Cognition)と行動的経験価値の関係から消費者の行動経験による差異化戦略を示唆した。また、経験価値・感性・エモーショナルデザインの関係性から、顧客の経験と商品デザインを考察した。
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