研究概要 |
本研究プロジェクトは,持続可能な交通体系の実現に資する総合的な交通政策構築へ向けて,EST(Environmentally Sustainable Transport)に関する多様な評価指標についての検討をはじめとした基礎的研究を行うことを目的としている。初年度にあたる21年度の具体的成果は下記の通りである。 欧米では,近年,自動車交通の社会的費用を定量的把握に関する研究蓄積をふまえ,その推定に取組み,その結果を総合的な交通政策の策定に利用しようとする取組みが進められているが,わが国では定量的に把握する試みさえまだほとんど行われていない。われわれは先行研究の検討,手法の検討を積み重ね,その成果に基づいて,まず東京地区を対象とした計測を試みた。これに併せて,より広範な持続可能性に関する評価指標についてのサーベイも継続的に行った。Transit Oriented Development(TOD:公共交通を基軸にしたまちづくり)が重要な政策概念となっているなか,駅勢圏に関する分析は興味深い課題である。そこでJR,阪急,阪神という3本の鉄道が競合している世界でも珍しい稠密な鉄道網のある阪神地域をとりあげてのその分析に取組み,端末交通手段,駅間距離,優等列車停車の影響を明らかにした。これら以外にも,交通事業者の行動が経済厚生へ及ぼす影響分析,需要側からの分析を進める上で不可欠となる交通行動分析手法の検討といった,政策評価研究を行う上で重要な研究も推し進め,それぞれ一定の成果を得,このうち前者については論文として公表することができた。次年度以降は,これら各分野の研究をさらにおしすすめ,相互に有機的連携を図りながら所期の目的を達成することをめざす。
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