研究概要 |
本研究の目的は,日本における現在までの財務会計研究を分類し,歴史的な変化を考察し,その特徴を抽出すること,および日本の財務会計研究の分布を把握することで長所を伸ばし短所を補うための将来の研究指針を示すことで,財務会計研究の進展と国際競争力の向上に貢献することであった。 平成21年度は,研究方法・研究主題・研究対象により分類基準(大分類・中分類)を構築し,当該基準に沿って分類作業を実施した。対象を雑誌『會計』とし,現在までの30年間の傾向と当該基準の実効性を把握するために,5年ごと8年間を対象としてパイロット・スタディーを実施した。 平成22年度は,分類対象を全期間に拡大した。全サンプル調査の結果は,初年度の結果ときわめて近似しており,歴史的な変化や研究の特徴が抽出された。当該分類作業により,第2の目的に関して,研究の方法の偏りによる重大な問題を認識したため,全期間にわたり掲載論文数の5~8割を占め,日本の財務会計研究の主力と考えられる規範的・記述的研究について,「科学性」を軸とした再分類を実施した。新たに「W型」および「H型(>4分類)」に分類したところ,当該研究の多くが学術的研究としての条件を十分には備えていないと判断される結果となった。そのほか,規範的・記述的研究が果たしてきた社会的役割として,会計制度の設計と運用,および会計教育についても検討を加えた。これらの諸結果の総括として,会計研究・制度・教育が一体となった「会計基準パラダイム」は転換すべきときに来ていると結論づけた。最後に,規範的・記述的研究および実証研究に関して,論文査読制度と研究者養成プログラムという視点から改善のための提言を行った。 平成22年9月の日本会計研究学会大会にて最終報告を発表し,同学会にて下記11にあげた図書を公表した。最終年度である平成23年度では,これまでの研究成果を再考・整理したうえで,出版を目指して活動する。
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