研究概要 |
今年度は,3年間にわたる本研究の最終年度である。2年目までに蓄積された議論(日本の財務会計の類型的特徴と研究および教育環境の問題点)を前提としたうえで,日本の将来の財務会計研究,とりわけ規範的・記述的研究およびその教育のあり方,研究方法,学術論文の作成方法などについて,以下の3点にわたって検討した。 (1)会計基準の記述的説明:会計基準の記述的説明を類型別に検討したうえで,多様な側面を有する会計基準を対象とした研究にも,理論を経験的事実に照らして検証するという科学的行為が不可欠であるという知見を提示した。 (2)規範的・記述的研究の要件:実証研究ではない規範的・記述的研究においても,経験的に検証可能な仮説を提示することが必要であるとしたうえで,当該研究における論証テストおよび査読基準について検討し提言した。 (3)過去の研究業績に向ける眼差し:先行研究の意義を再確認したうえで,これまでに蓄積されてきた学術的遺産といえる古典文献の購読の重要性を論じた。そして,理論研究に属する古典について,抽出条件を明示したうえで,テーマごとに複数の古典を選別した。これは,将来の教育用シラバスを意図したものである。 規範的・記述的研究およびその教育に関する上記の取り組みにより,研究計画に掲げていた(1)将来の研究に対する波及効果,(2)制度設計・基準設定に対する貢献,および(3)会計教育への貢献のすべてについて,達成度ないし完成度を高めることができた。とりわけ,日本の財務会計の学問的位置づけをあきらかにした本研究の貢献は大きい。
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