事前に承諾が得られた86組の家族(高校卒業生とその保護者)を対象として、平成24年8月から10月にかけて「学校生活と社会に対する高校生の意識調査」第4回調査を、郵送調査法により実施した。その結果、74組から協力が得られた。しかし、調査設計が複雑になったこと、第3回調査までのデータに入力ミスが発見され修正に時間がかかったことから、第4回調査のデータ入力の業者委託は平成25年10月になった。第4回調査データの分析結果は12月に「速報」として調査協力者に配布した。 第1回から第4回までのデータを用いて総合的な分析を進め、主に以下のような知見を得た。(1)高校生の進路希望と親の進路期待のマッチング過程に階層要因は作用していても業績原理が強く働いてはいない。(2)教育アスピレーションの形成過程において男性では同性の年上のきょうだいが、女性では男女を問わず年上のきょうだいが、ロールモデルとなっている。(3)職業アスピレーションには親からの「社会化」効果よりも出身階層や本人属性要因の影響が大きい。(4)進路多様校の生徒の学習意識が過去の調査と比較して高まっている一方で、学習時間そのものはそれほど増加していない。(5)1年次でのソーシャルスキルが高いことが2年次の学業成績の低下を引き起こしている、という影響関係がある。(6)高校生の知的柔軟性が親の階層と自身の進路志望とを媒介する要因になっているという仮説は支持されない。(7)現代の高校生の規範意識の特徴は、世代論よりも発達論的見解によって説明できる。(8)有配偶女性の学歴・就業形態・性別役割意識の関連の変化は「社会的望ましさ」や労働市場の構造変化により部分的に説明できる。これらの知見の一部は各種学会大会等で報告した。 全体的に見ると、転換期にある日本社会において、格差・階層再生産の傾向が強まったという仮説を積極的に支持することは難しい。
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