研究概要 |
本研究は,サービス提供責任者の調整業務力及びヘルパーの援助力の違いによって,またヘルパーの業務ストレスの違いによって,訪問介護の利用者満足度が,影響されるかどうかを明らかにすることを目的にした.このためにつぎの4つの尺度を開発した.すなわち,(1)サービス提供責任者のストレッサー尺度(老年社会科学32(1)2010),(2)サービス提供責任者の調整業務の評価尺度(老年社会科学34(3)2012),(3)ホームヘルパーの援助力を測る尺度(老年社会科学33(4)2012),(4)ヘルパーの職務ストレッサー尺度(学会誌に投稿,査読修正中). 東京都A市の訪問介護の利用者(n=1387)を対象に満足度調査を行い,事前の了解を得た上で「利用者とその利用者を訪問するヘルパー」のペアをつくり,利用者の満足度に影響する要因を分析した.その結果,ヘルパーの援助力とヘルパーのストレス反応(バーンアウト)は関連していたが,利用者の満足度とヘルパーの援助力及びストレス反応との間には,統計的に有意な関連はみられなかった.この理由としては,(1)利用者の満足度尺度(老年社会科学25(3)2003)は,ヘルパーの基本的な態度を測定しているが,ヘルパーの援助力尺度は自己評価であり,管理者など上司による評価でないこと,(2)ヘルパーは,たとえストレスを感じていても利用者にはそれを表さない,あるいは利用者との関係が良くないヘルパーは,事業所が交代させるので,継続しているヘルパーの大部分は,利用者との関係が良好であり,援助関係を測る本満足度尺度には影響しなかったという解釈が考えられる. 当初,仮説とした関連は見られなかったが,バーンアウト尺度で測ったヘルパーのストレス反応が,利用者の満足度に影響しないという知見は,本研究によって初めて得られたと言える.
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