浴風会で収集した個人記録の読み起こしと内容の分析を行うと同時に、これまで継続して資料収集を行ってきた府中静和寮(広島県府中市)、小樽育成院(小樽市)、共楽荘(横須賀市)、福生園(堺市)に加え、札幌慈啓会老人ホーム(札幌市)の資料の収集も開始した。すでに資料収集を終了した報恩積善会(岡山市)、神戸老人ホーム(神戸市)、静山荘(軽井沢町)、一志養老院(津市)では、収集した資料の整理・分析を開始した。浴風会の資料のうち、戦前までの分を5期に分けて、それぞれの期の中で比較的個人記録の記載の多い利用者の資料を中心に、約80ケースを読みお越した結果、昭和10年代の記録が比較的充実していることが判明した。この記録の中には、今日の認知症と思われる利用者に対しての職員の対応が詳細に書かれているものもあり、本研究の目的に即した利用者ケアの実態の一部を知ることができた。浴風会の資料発掘を実施する過程で、設立当時の図面が残っていることがわかった。ただ損傷が激しいために、今後の保存と貴重な資料の公開の可能性とを浴風会と検討をし、電子媒体での保存を決定し、実施した。 また前年度に引き続き、ララ物資・CACに関する資料を各施設の資料からピックアップし、同時代の各地域での状況を掴むための基礎作業を開始した。さらに福生園の資料を中心として、1952(昭和27)年の社会福祉法人設立の経緯をある程度確認することもできた。社会福祉法人の欽定の雛形が福生園によって作られていった可能性はかなり高いことがわかった。 さらに韓国の歴史のある施設が、戦前期に日本からどのような影響を受けたかの調査は、先方の都合により延期されることになった。
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