今年度は特に韓国における多文化家族政策の制度的側面に着目し援助の実施主体であるNPOと自治体との関係構造等の把握を課題とした。調査では韓国の多文化家族の生活実態と課題の把握、地方自治体レベルでの支援策や支援活動について明らかにすること、また多文化家族の破綻事例について把握することを課題とした。調査は8月23日から28日の大邱市、慶尚北道での調査(大邱市調査)と、10月31日から11月4日のソウル市、龍仁市での調査(ソウル・龍仁市調査)の2回を実施した。大邱市調査では、多文化家族センターと地方自治体との関係、運営の具体的実態を把握するため、大邱市庁女性青少年家族課、達西区庁企画調整室、達西区多文化家族支援センター、大邱市女性家族研究センター、慶北亀尾市多文化家族支援センター、慶尚北道女性政策開発院、キム・ハンゴン零南大学教授を訪問した。その成果は多文化家族支援の自治体での政策課題としての認識、支援の実施過程や多文化家族支援センターの運営実態を具体的に把握したこと、慶尚北道の農村地域での国際結婚の初期の経過、政策課題化の過程を把握することができたこと等である。ソウル・龍仁市調査では、龍仁市多文化家族支援センターの前センター長ハム・セナム江南大学名誉教授への聞き取り、ソウル家庭法院、龍仁市多文化家族支援センターの訪問、また安山市、九老区加里峰洞を踏査した。ハム教授からは社会福祉研究者の立場からみた多文化家族問題の位置づけについて、ソウル家庭法院では裁判官および調査官から国際結婚の破綻の具体的事例と支援施策について把握した。なお次年度の調査に向けて岐阜県および埼玉県で結婚移住者の支援団体等への聞き取り調査を行った。
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