本研究は、国際比較を通じて、日本のスクールソーシャルワーカーに求められる専門的知識や技術を明らかにし、スクールソーシャルワーカーの養成や現任者を対象とした研修プログラムを提示することを目的として実施した。 平成24年度においては、平成21年度に実施した国内のスクールソーシャルワーカーから6名を抽出し、平成21年度とほぼ同様の質問内容で聞き取り調査を実施した。この聞き取り調査の目的は、スクールソーシャルワーカーとしての経験値が蓄積されることによる実践への影響や専門職としての意識の変化等について整理するとともに、経験値に応じた現任者研修のあり方を明らかにすることであった。個人差はあるものの、いずれの調査対象者も経験年数を重ねることで、より専門職としての意識が高まり、それに応じた研修やスーパービジョンを求めていることが明らかになった。さらに、今回は3地域(福岡、香川、東京)で調査を実施したが、地域ごとに研修のもち方や内容に特徴があることや、その研修が実際の各スクールソーシャルワーカーの実践内容に大きな影響を及ぼしていることも明らかになった。 この国内の聞き取り調査に加え、平成22年度および今年度に行ったアメリカのスクールソーシャルワーカーへの聞き取り調査の内容を踏まえ、国際比較のための質問紙を作成し、日本とアメリカのスクールソーシャルワーカーを対象にWebアンケート調査を実施した。調査からは、スクールソーシャルワーカーとしての知識・技術・価値をある程度備えていると感じていても、研修やスーパービジョンを必要としている現任者の姿が浮き彫りとなった。しかし、今回の調査では回答数が少なく、対象者のバックグラウンドや勤務形態等と研修に求める内容の関連や国際間の違いを明らかにするには至らなかった。そこで、平成25年度も自費によりこの調査を継続し、更なる分析を加える予定である。
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