研究概要 |
本研究の主な目的は、(1)一般高齢者に対する調査、(2)要介護高齢者の主介護者等に対する調査、(3)その追跡調査を行い、これらの結果を介護保険制度の導入前や改定前に同一地域で実施した調査結果と比較することで、介護保険制度の導入や改定が、高齢者や介護者に与えた影響を評価することである。平成22年度は上記の(1)と(2)の調査を行った。(1)の一般高齢者調査は、東京都内一市部にて65歳以上の住民8,000人を無作為抽出し、要介護高齢者を把握するための「スクリーニング調査」と介護保険制度に対する評価等を調べる「世論調査」を郵送法(一部、訪問回収を併用)にて実施した。(2)の要介護高齢者の主介護者調査は、スクリーニング調査の結果、日常生活動作や認知機能に一定程度の障害を有すると推定された873人(在宅生活者のみ)の介護を主に担っている家族に対して、訪問面接調査を行った。面接の結果、要介護状態でないことが判明した人を除外すると、414人の在宅要介護高齢者の主介護者等に調査を完了した。 (1)の一般高齢者調査の結果、介護保険制度に対する評価は肯定的な評価と否定的な評価にほぼ二分されており、過去の調査結果と比較すると、否定的な評価が経時的に増加していることが明らかとなった。否定的な評価は要介護認定を受けていない一般高齢者で多かった。また、過去の調査では、寝たきりになったら自宅で家族にみてもらいたいという「家族介護志向」が最も多かったが、今回の調査では「施設介護志向」が最多となっていた。(2)の在宅要介護高齢者の主介護者調査からは、多くの介護サービスで充足度が経時的に増加しており、サービスへの満足度も高い一方、世帯員数の減少や老々介護の増加など家族介護力の低下がうかがえ、介護者の身体的・精神的・社会的負担は、介護保険制度の導入前と比べて改善していないことが明らかとなった。
|