研究概要 |
本研究の目的は、(1)「65歳以上の高齢者」と「要介護高齢者の主介護者」に対する調査を行い、その結果を介護保険の導入前(1996,98年)や改定前(2002,04年)に同一地域で実施した調査結果と比較【反復横断調査】、(2)「主介護者の追跡調査」を行い、介護保険の導入前(1996-97-98年)や改定前(2002-03-04年)に実施した追跡調査と比較【パネル調査】、といった手法を用いて、介護保険制度の導入や改定が、高齢者や介護者に与えた影響を評価することである。 今年度は、第一に、昨年実施した調査データを過去の調査データと突合させ、96,98,02,04,10年の5時点での比較が可能な反復横断調査データを作成し、介護者の負担感やサービスニーズの充足、介護環境等の経年変化を分析した。サービス利用やニーズの充足状況は、制度導入前と比べて増大していたが、制度導入後の増加は大きくなく、2005年の制度改定以降、特に訪問介護では利用の抑制がみられた。介護者の情緒的消耗や生活上の負担感は、制度導入後も増加していること等が示された。 第二に、昨年の介護者調査の完了者に「1年後の追跡調査」を実施した。この調査は在宅継続者だけでなく、入所や死別経験者も対象とした。その結果、(1)1年間の在宅継続率は77.3%で、介護保険導入前の1996-97年調査(71%)より増えていたが、導入後の2002-03年調査(78%)とは差がない、(2)通所サービスの利用が在宅継続に貢献する可能性がある、(3)昨年の調査時にサービス利用意向が高かった人のうち、サービスを利用できていたのは4割程度で、訪問看護ではこの割合が低い、(4)在宅介護を継続している介護者の身体的な疲労徴候や入所希望が増加、(5)死亡者の64.5%が病院で死亡していたが、死亡者本人の87%、介護者の77%が自宅での死亡を希望していたこと等が明らかになった。
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