研究課題
本研究の目的は、介護ニーズを有する高齢者やその家族介護者に対して介護保険制度の導入や改定が及ぼした影響を実証的に評価することである。検証にあたり、介護保険制度の施行前、施行直後、施行10年後の各時期に、東京都A市で一般高齢者と介護者の「反復横断調査」、並びに介護者の「パネル調査」を行い、介護保険制度の影響の定点観測を行った。今年度は、1996、98、2002、04、10年に実施した「反復横断調査」データの解析を進めるとともに、2010年の介護者調査の完了者に対する2回目の追跡調査を行った。これにより介護保険制度の施行前(1996-97-98年)、施行後(2002-03-04年)、施行10年後(2010-11-12年)の各時期に、それぞれ3wavesのパネル調査を実施したことになる。今年度の主な知見は以下である。反復横断調査データを基に要介護認定未申請者の状況を調べた結果、2010年の時点でも身体または認知機能に何らかの障害を有する高齢者の2割が認定申請をしておらず、これは介護保険導入期と同率であった。さらに「手続きがわからない」ために認定申請に結びついていない人が未申請者の2割を占めていたことから、情報リテラシーの問題が一部で継続していることも示唆された。パネル調査データを基に在宅サービスの入所抑制効果を解析した結果からは、通所サービスが入所抑制効果を有するようになっていることが示唆された。通所サービスは2005年の法改定後も利用が伸びている唯一の居宅サービスなので、その入所抑制効果を確認できたことは介護保険制度の「在宅重視」の理念に照らして評価できる現象である。しかし、寝たきりなど入所や長期入院につながりやすい人は通所サービスを利用しにくいため、そのような利用者要件の制約を反映した可能性も否定できない。今後さらに介護保険制度の影響を多角的に検証していく予定である。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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厚生の指標
巻: 59(15) ページ: 1-9
日本公衆衛生雑誌
巻: 59(5) ページ: 325-332