研究概要 |
食品リスク情報への消費者態度に関する実験社会心理学的解明に関連して,平成23年度は専門性の高い食品安全情報に関するリスクコミュニケーション手法の開発を行った.残留農薬をテーマとし,従来のシグモイド関数グラフよりもわかりやすく正確な状況認識を多くの人々がもてるような情報表示デザインを試作し,一般消費者を対象にその効果を検証した.その結果,提案デザインで説明を行った場合の方が,従来グラフの場合よりも正しいリスク認知ができることが示唆された.本成果は日本デザイン学会2012年次大会で発表予定である. また,消費者の食品認知に関連して,食品の鮮度知覚の規定要因の解明および乳児における感覚統合を通じた食品知覚の発達について検討した.これらの研究から人間の食品知覚・認知の基盤の一端が明らかとなった.これらの成果はそれぞれFood Quality and Preference,Appetiteといった食行動を扱うトップジャーナルに掲載された. さらに,昨年度に実施した食器デザインが食品のジェンダー・ステレオタイプに及ぼす影響については,今年度に欧文論文としてAppetiteに発表した.本論文は食品のステレオタイプが食器や盛付けといった視覚的な工夫によりある程度調整できることを示唆するものであり,特定の食品に対する偏った認知の解消に応用できる可能性がある. これら本研究課題の研究実績は国内外から高く評価されており,食のステレオタイプや消費者行動に関する概説執筆の依頼を受けた.その成果として,Springer社の『Handbook of Behavior,food and nutrition』に「Chapter 140.Gender-based food stereotypes among young Japanese」を,また勁草書房の『味わいの認知科学』に「第10章食と消費者行動」をそれぞれ寄稿し,当該年度に出版された.これらは関連領域の基礎的知見に加えて本研究課題の成果を初学者・研究者向けに紹介したもので,本知見の国内外への周知にもつながる.
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