研究概要 |
本年度は,自治体の療育機関でロボットと自閉症児とのインタラクションを実践・記録するためのシステム構築し,予備的なインタラクション観察を行なった.具体的には,まず療育機関(近江八幡市子ども療育センター)と事業内容・倫理安全性・個人情報関係についての契約を交わした.また諸機器の設置調整を行ない,ロボットに設置したカメラ画像を無線伝送するシステムを再構築し,より安定した画像データの収録が可能になった.この画像をもとに別室にいる操作者がロボットを遠隔操作するが,そのためのPC上のグラフィカルインタフェースを新たに開発し,研究者だけでなく,療育施設のセラピストや小児科医にも簡単に使えるように改良を施した. また,データの量的・質的分析の方針も検討し,そのためのコーディングツール(PC上のグラフィカルなアプリケーション)を開発した.基本的には,収録したビデオ情報にアノテーションを加えていくものだが,本研究の目的に特化し,子どもからの行為(注視対象・手動作など)と社会的・物理的状況(保護者やセラピストの位置・行為,玩具の位置など)を半自動的に記述していく.また質的なデータとして,複数の観察者(あるいは参与者)が子どもの内面などを共感的に捉え,それを記述することができる.これら客観データと主観データの相関は,別のソフトウェアで評価する予定である. これらと並行して,自閉症児からの社会的な関わりスタンスを計量化するため,視線計測装置を導入し,実体のあるロボットや画面上のロボットに対する視線を実時間計測するための技術的準備および予備計測を行なった.通常の視線計測データの収録とは異なり,実時間でデータを取得し,それをロボット動作に反映させる必要があるため,そのためのソフトウェアを新たに開発した.
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