本研究では安心感に焦点を当てて、それによって生活習慣を変容させるプログラムの実行を阻むものに対して、その働きを抑制しようとするものである。生活習慣の変容を阻むものとして交流分析理論によるラケット感情を設定している。ラケット感情は、個人によってそれぞれ違うものとされているが、特徴としてその感情が徐々に蓄積されていき、最後に合理的な理由をつけて自己破壊的な行動を起こすものとされている。 本研究ではまず禁煙行動を阻むラケット感情の実態について検討するために、病院の禁煙外来受診経験者について、心理士によるインタビューを行った。具体的には禁煙外来の受診経験のある人を対象として、調査協力を呼びかけ、同意してくれた人にインタビューを行い、現在禁煙を継続しているか、喫煙を再開しているかという状況とともに、禁煙外来受診中、受診終了後における、気分と感情的な変化を中心に聞き取り調査を行った。その結果、禁煙継続者に比べて、喫煙再開者の方が、自ら禁煙外来を受診したにもかかわらず、受診中からラケット感情の蓄積がみられ、それが日常生活の些細な出来事(飲酒中にタバコを勧められるなど)によって喫煙を開始し、それが持続されることが示された。この調査と平行して、現在携帯電話を用いての喫煙状況調査のためのプログラムを作成している。このプログラムは喫煙時に携帯電話で空メールを指定のアドレスにおくることによって、オンラインで喫煙日時を記録するものであり、この記録と生活状況を対応させることによって、どのような状況で喫煙しているのかを記録するものである。現在このプログラムは試験的な運用段階にあり、次年度にさらに本格的な運用を目指している。
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